悲しみの池

病気になってから、わたしの中で驚くべき変化が一つ起こっている。
涙もろいわたしが、涙を流せなくなった。
悲しいことがあっても、感動的な映画や本に出会っても、涙が出ない。
うつ病の症状に見られる、感情の動きが鈍くなっている、という状態ではない。笑いもすれば怒りもするし、ちゃんと悲しいという感情も感じている。が悲しい感情だけが表に現われない。なぜだろう?そうして掃き出されずに湛えられた悲しい感情は、心の中でいつもゆらゆらと揺らいでいて、状態が悪くなるとずっしりと体中に覆い被さってくる気がする。それでも、薬はきちんと効いているし落ち込む日は以前に比べ劇的に少ないのだが。涙が普通に流せるようになった時が、治ったときなのだろうか?


担当の医師に今の病院で診てもらうのが今日で最後であった。もとより週に一度しかいない非常勤の先生であったが、丁寧な診察をしてくれる誠実で優しい印象の方であった。実は自分の中ではものすごく名残惜しかったのだが、お世話になりました、ありがとうございますとだけ言って出た。次に来る先生がまた良い人であればいいなぁ。