信頼関係の断絶

あるサークルに所属している。そのサークルの運営を一手に引き受けてきた人が、皆に後ろ足で砂をかけるような感じで辞めていった。
メンバーはその行為に傷つき、ショックを受けている。一部は怒っている。わたしもかなり動揺している。


メンバーはみな仕事をもっていて、趣味としてサークル活動をしている。だから、仕事が忙しかったりするとサークル活動は大変だ。趣味とはいっても組織である以上ある程度責任というものが発生してしまうからである。それぞれが本業と家庭をおろそかにしないよう、時間をやりくりしながらやっている。時には、ゴメン、今回参加は無理、なんてことも仕方がない。お互い様とみな理解していると思っていた。


彼には実はそれが許せなかったようだ。以前から、参加率が低いメンバーについて、やる気がないとか不真面目という不満をぽつぽつ漏らしていた。そうは言ってもそれぞれに事情があるから仕方がない。というか、言ってしまえば、趣味にどれくらいの労力を費やすかはその人の自由である。義務ではないし強制することなどできないのだ。楽しめてこその趣味である。まあしょうがないじゃん、と彼をなだめていた。


運営自体は、はじめは彼だけでなくノウハウのある人が何人かで行っていた。それが、転勤になったり、本業が激務になりサークルのほうに携われなくなったりして、運営する人が減っていった。それでも彼のほかに何人かいたはずであるが、いつのまにか彼一人でサークルの事務局をするようになっていた。
そんなある時、彼が突然自分のブログに名指しでこそないものの、自分の周りの人はみな薄情だと書いた。そこにはメンバーが出した些細なリクエストや意見が「不平不満」「文句」としてあげつらわれた。そしてついに先日、辞めます、さようなら、というメール。


一見、皆が面倒な仕事を彼に押し付けているように見えるし彼はそう思っているだろうが、わたしはそうは思わない。運営者たちは特に彼に仕事を押し付けるようなことはしていない。他の運営者が提案したことを彼は事実上無視して一人でことを進めていっただけである。他の運営者が譲っただけである。そして彼は、ついてこれないメンバーを「薄情だ」と。


いったいわたし達はどうすればよかったのか。イベントの昼食手配でさえも一人でどんどんやってしまう彼を止めれば良かったのか?メンバーからもこれまで、「そんなこと言ってくれればやったのに」とか、「それぐらい人に振れよ」という声がたびたび聞こえていたはずなのに。そのうち皆何も言わなくなり、「色々やってくれてありがとう」という謝意を表すのみになった。それさえも、彼には聞こえていなかったように見える。